両生類研究センターの井川助教と、生理学研究所の齋藤助教らとの共同研究の成果が国際科学誌(Molecular Biology and Evolution (MBE))に掲載されました。詳しくは広島大学からのプレスリリースの本記事と同じタイトルの記事をご覧ください。
本研究では日本在来で、様々な地域に生息する5種の両生類種(カエル)のオタマジャクシについて、それぞれの種のオタマジャクシが嫌いな温度(忌避温度)を調べました。その結果、氷が張るような早春に産卵するニホンアカガエルにおいて忌避温度が最も低く、天然の温泉が流れる沢でも成育できるほどの高温耐性を持つリュウキュウカジカガエルにおいて、忌避温度が最も高いことが分かりました。さらに、高温を感じ取る際に重要な TRPA1(トリップ・エイワン)というセンサー分子を調べたところ、忌避温度が最も低いニホンアカガエルで最も大きかった一方で、忌避温度がもっとも高いリュウキュウカジカガエルの TRPA1 は高温の刺激に対してほとんど反応しませんでした。
これらの結果によって、生息環境によってオタマジャクシの嫌いな温度が異なること、またその違いには TRPA1 が深く関わっている可能性が高いことが明らかになりました。本研究の成果は、野外で観察される生態的特性の種間の違いについて行動レベル、更には温度センサー分子レベルにわたり包括的に解明したものであり、動物の環境適応機構の理解につながると考えられます。